
雛人形の十五人は誰?段ごとの役割と持ち物
十五人飾りの雛人形を前にすると、「この人たちは誰なんだろう」と思うことがあります。お内裏様とお雛様は分かっても、下の段の人形になると名前も役割も分からない。この記事では、雛壇に並ぶ十五人が誰で、何を持ち、どんな役目なのかを、段ごとにご説明します。
この記事でわかること
- 十五人は何を表した人形なのか
- 段ごとの名前・役割・持ち物
- 三人官女の眉がない理由
- 「向かって右が左大臣」と呼ばれる理由
- 関東と京都で仕丁の持ち物が違うこと
十五人は、宮中の婚礼を表した人形です
雛人形の十五人は、平安時代の宮中の結婚式の様子を人形にうつしたものです。一段目の親王を主役に、お世話をする女官、祝いの席で音を奏でる少年たち、警護の武官、雑用を担う従者という順に並びます。上の段ほど身分が高く、下に行くほど実務を担う人たちです。
飾りの構成については親王飾り・五人飾り・段飾りの違いと選び方で詳しくご説明しています。この記事では「誰が並んでいるか」に絞ってお話しします。
一段目|男雛と女雛(親王)
親王(しんのう)とは、天皇と皇后を象徴する男雛・女雛ふたり一組の雛のことです。男雛は束帯(そくたい)という正装に身を包み、手には笏(しゃく)を持ちます。笏はもともと儀式の式次第を書いた紙を貼りつけておくためのもので、いまでいうカンペにあたります。
女雛は十二単(じゅうにひとえ)をまとい、檜扇(ひおうぎ)を手にします。檜の薄板を綴じた扇で、あおぐためではなく、顔を隠したり、和歌をしたためたりするための道具でした。
男雛と女雛の左右は、地域によって逆になります。関東では男雛が向かって左、関西では向かって右に置くのが一般的です。どちらかが間違いということはありません。
二段目|三人官女
三人官女(さんにんかんじょ)とは、宮中に仕えて親王の身のまわりを支えた女官のことです。いまでいえば、式をとりしきる進行役にあたります。
| 位置 | 持ち物 | 役割 |
|---|---|---|
| 向かって右 | 長柄銚子(ながえのちょうし) | 柄の長い酒器。盃にお酒を注ぐ役 |
| 中央 | 三方(さんぽう)または島台(しまだい) | 盃をのせて差し出す役。地域により島台を持つ |
| 向かって左 | 加銚子(くわえのちょうし/提子) | 長柄銚子にお酒を注ぎ足す控えの酒器 |
三人のうち中央の官女だけ、眉がなく、歯が黒く塗られていることがあります。これは既婚の女性を表す当時の化粧で、三人のなかで年長者・指導役であることを示しています。姿勢も形式によって、全員が立ち姿のもの、全員が座り姿のもの、中央だけ座っているものなどさまざまです。
三段目|五人囃子
五人囃子(ごにんばやし)とは、能楽の囃子方(はやしかた)を表した5人の少年の楽人です。まだ元服前の、宮中に仕える貴族の子どもたちとされています。婚礼の席で音楽を奏で、場を祝うのが役目です。
並びは向かって右から、謡(うたい)・笛・小鼓(こつづみ)・大鼓(おおつづみ)・太鼓。右にいくほど音が小さく、左にいくほど大きな音の楽器になります。ひとりだけ楽器を持たず、扇を手に口を開けているのが謡です。歌い手なので手がふさがっていません。
四段目|随身(通称・右大臣/左大臣)
随身(ずいじん)とは、親王を警護する武官のことです。弓と矢を携え、背には矢を入れた箙(えびら)を負っています。「右大臣・左大臣」と呼ばれることが多いのですが、これは俗称で、正しくは随身です。本来は宮中を警護する近衛府の武官にあたります。
向かって右に白髪の年長者、向かって左に若者を置きます。年長の方を向かって右に置くのは、敬老の意味からきています。着ている袍(ほう)の色が同じ場合も、黒い袍の人形を向かって右に置くのが習わしです。
なぜ「向かって右」が左大臣なのでしょうか。宮中では、玉座に座る側から見た左右で位置を呼びます。人形を正面から見ている私たちとは左右が入れ替わるため、向かって右が「左」大臣になります。桜と橘の配置も同じ理由です。
五段目|仕丁
仕丁(しちょう)とは、宮中の雑用を担った従者のことです。十五人のなかで唯一、貴族ではない庶民の人形です。泣き顔・笑い顔・怒り顔の三つの表情でつくられることから三人上戸(さんにんじょうご)とも呼ばれ、子どもが表情豊かに育つようにという願いが込められています。
持ち物は関東と京都で異なります。
| 地域 | 持ち物 |
|---|---|
| 関東 | 中央に沓台(くつだい)、男雛側に台笠(だいがさ)、女雛側に立傘(たちがさ)。外出のお供の道具 |
| 京都 | 熊手・箒(ほうき)・ちりとり。御所の庭を掃き清める道具 |
六段目・七段目|お道具
六段目には箪笥(たんす)・鏡台・針箱・火鉢・茶道具といった嫁入り道具が並びます。どれをどこに置くという決まりは特にありません。
七段目は外出のための道具で、中央に重箱、向かって右に御所車(ごしょぐるま)、向かって左に御駕籠(おかご)を置きます。
桜と橘はどちらが右ですか?
向かって右に桜、向かって左に橘を置きます。京都御所の紫宸殿(ししんでん)に植えられた「左近の桜・右近の橘」にならったものです。ここでも玉座から見た左右なので、私たちから見ると逆になります。
よくある質問
十五人そろっていないと失礼にあたりますか?
そのようなことはありません。雛人形はもともと、子どもの身代わりとなって災いを引き受けるもので、人数の多さが格を決めるわけではないからです。工房ひな雛でも、掲載品の約65%は男雛と女雛だけの親王飾りです。
あとから人形を足していくことはできますか?
できます。工房ひな雛では三人官女や五人囃子・随身・仕丁を単体でもお求めいただけます。工房ひな雛では親王飾りの飾り台にそのまま三人官女が並びますので(長板飾り台と間口40cm未満の飾り台を除く)、お子様の成長に合わせて少しずつ賑やかにしていく飾り方もできます。
五人囃子が三人しかいない飾りを見かけました
能楽の囃子ではなく、雅楽(ががく)の楽人を表した三人囃子や、能楽の五人から人数を減らした構成もあります。飾る場所に合わせた工夫として古くからあるものです。
官女の持ち物を落としてしまいました
小さなお道具ほど、飾り付けや片付けのときに失くしやすいものです。工房ひな雛でお求めいただいた品であれば、小物単体でのご相談を承っております。アフターサポートをご覧ください。
人形の名前を子どもにどう説明すればいいですか?
役割で伝えると分かりやすくなります。「お世話をする人」「音楽を奏でる人」「守る人」「お手伝いをする人」。そのうえで持ち物を一緒に探すと、飾り付けそのものが遊びになります。
まとめ
雛壇の十五人は、宮中の婚礼に集まった人たちです。上の段から、主役の親王、支える女官、祝う楽人、守る武官、働く従者。それぞれに名前と役目と持ち物があり、左右の呼び方が私たちの感覚と逆になるのは、玉座から見た左右で呼ぶからです。飾り付けのときに一人ずつ役割を思い出すと、毎年の準備が少し楽しくなります。
飾り付けの前に確かめたいこと
- 男雛と女雛の左右(関東は男雛が向かって左)
- 三人官女の中央に、眉のない人形がいるか
- 五人囃子は向かって右から謡・笛・小鼓・大鼓・太鼓
- 随身は向かって右が年長者
- 桜は向かって右、橘は向かって左
参考:一般社団法人 日本人形協会「雛人形の飾り方」「雛人形の三人官女」
工房ひな雛は、埼玉県さいたま市の木目込み雛人形の専門工房です。人形・飾り台・屏風・雪洞・お花・小物まで、すべて自社で製作しております。
五月人形は姉妹ブランド 工房真 で承っております。


